行動の定義とは何かがわかる!
2016/11/27
本日ご紹介する本は杉山尚子さん著の「行動分析学入門 ヒトの行動の思いがけない理由」という行動分析学に関する内容です。
著者情報
杉山尚子
・1998年慶應義塾大学大学院心理学専攻博士課程修了
・山脇学園短期大学助教授
・2000年より日本行動分析学会常任理事
・2004年より日本行動科学学会事務局長
・行動分析学の日本での研究、普及に全力を傾けている
行動分析学とは?
行動分析学とは簡単に説明すると、
→人の行動を分析すること
分析とは人の行動の原因を明らかにする、突き止めること
→行動を実験的に分析する科学
実験とは「現状に対するある新しい条件に加え、対象となる行動の変化を見ること」
難しく説明すると、
「行動の原因を解明し、行動の法則を発見する基礎科学」と、「現実社会における人々の行動の問題を基礎科学で発見された法則に基づいて解決していく応用科学」の二つの側面を併せ持つ心理学
行動の定義とは何かがわかる!「行動分析学入門 」の読書まとめ
そもそも行動とは何か?
本書の定義では「死人にはできない活動のこと」とある
・行動とは言えないもの
→車に轢かれる
→怒らない
→崖から落ちる
→会議の間一度も発言しない
→上司に褒められる
→静かにしている
など
・行動といえるもの
→考える
→名作を読んで感動する
→犯人を推理する
→思い出す
→記憶する
など
行動というと、動くという漢字からの連想で、何か手足を動かしてすることに限定されると思われがちだが、行動分析学では、ここにあげたような必ずしも見かけ上は体が動かさないで行うことも行動と考え、分析の対象となる。
行動分析学で重要な用語
→行動随伴性(こうどうずいはんせい)
行動の原因を分析する枠組みで、行動とその直後の状況の変化との関係をさす
→強化
行動が強くなり、行動が繰り返し起こり、行動の変化が増えていくこと
例えばこたつに手を入れて「温かくない」→「温かい」という具合に状況が変化する
これを一度経験すれば、また同じ行動を繰り返す、といったこと
→好子(こうし)
行動の直後に提示されたときのその行動を増大させるように機能する刺激や出来事のこと
例えば美味しい食べ物や飲み物を口にするとまた食べたり、飲んだりすること
→嫌子(けんし)
ある行動の直後に提示されると、その行動の頻度をさげるもの
例えば生徒が授業中におしゃべりをしたときに、先生が叱り、その後に生徒のおしゃりがなくなる、というようなこと
このように、行動を増幅させる嬉しいことを「好子」、減少させる嫌なことを「嫌子」という
(厳密には好き、嫌いでないこともある)
逆行チェイニングという技法で人の行動を促す
行動分析学による定義や専門用語の説明をしましたが、それでは中身を伝えにくいので、本書の内容から人の行動に関して、自分が興味深かったことについてお伝えします。
*逆行チェイニングという技法を使って小さな子供に歯磨きを教える話し
→チェイニングとは、プロセスの一つ一つを鎖に例えて、それをつなげていくという意味の技法
→最初から順番につないでいくのとは逆に、後ろから順番につなげていく逆行チェイニングとい方法が効果を発揮する
→「歯磨きをする」という行動を一つとっても、多くのプロセスが存在する
→歯ブラシを手に取る、水道の蛇口をひねる、毛先を濡らす、歯磨き粉を絞りだすなど、10~15のプロセスを経て「歯磨きをする」という行動になす
→これを小さな子供に教えるときに、普通思いつくのは、初めから順番に教えて、どこかでつまづいたら手伝ってあげる、ということ
→逆にはじめの方は手伝ってしまい、最後のプロセスだけを自分でさせるのが逆行チェイニング
→最後のプロセスができるようになったら、最後から2番目と最後だけを1人でしてもらう
→次に3番目、というのを繰り返し最終的には、最初から自力でできるようにする
この技法は子供でなくても、例えば会社で、動きが鈍い人に対しても応用ができると思いました!
最後の締めだけはきちんと自分でして、達成感を味わわせられるということがみそですね。
先に結果を経験してもらえば、次の行動への一歩が踏み出しやすくなるかなと感じました。
精神的な病気の人の困った行動の改善の話し
ある精神病棟に入院している患者が用もないのに頻繁にナースステーションに入ってくるいう問題があった。
看護師たちはどうしても解決したい課題であったが、何を質問しても答えない。
答えないのが病気のせいだからと我慢や同情するにも限界があり、2年もすれば厄介者として扱われようになった。
この行動を病気のせい、愛情欲求などと考えるのは、医学モデルである。
行動分析学では、行動の原因は行動直後の状況の変化にあるとする。
→この場、ナースステーションに来れば居合わせた看護師が振り向き、声をかけ、手を引いて病室に連れ戻す
→つまり看護師が一斉に患者に注目するということ
これが患者にとって「好子」だった。
そこで、
→患者がナースステーションに来たら、看護師は見てみぬふりをして、患者が出ていくまで仕事を続けた
→その結果、2年にわたって、1日に平均16回やってきいた患者が4週間後には2回、8週間後には完全に消滅した
この技法には賛否があると思いますが、ナースたちを2年も苦しめていた問題が、具体的な方法で解決したという点では、必ずしも否定できない方法なのかなと感じました。
このような場合、人の気持ちとしては、むやみにナースステーションに来るのを、その都度しっかりを接してやめさせることが一番良いと思うのが普通ですが、いつまでも解決しないことに対しては、こういった何らかのアクションというのも時として必要なのだと思います。
読書感想
この本を読んでみて気づいた、身近なことで思うことは、人が好意でおすすめしたことはやってみる、行動してみる、ということです!
例えば人が人に何かをすすめたときは、すすめた人はその人が自分のおすすめしたことを実際にやってくれることが「好子」になるのだと思います。
そのときにすすめられた相手が何もしなかったら、すすめた人は「好子」を感じなくなります。
そうすると、もうその相手には徐々に何もすすめなくなりますよね。
そうなると相手は長い目で見て情報やきっかけを得るチャンスをなくすということになります。
これは非常に重要なことで、ブレークスルーしている人、成功している人のすすめたことをしないというのは、いずれそういう話しをしてもえなくなる、またはキツイ言い方をすると、相手にされなくなるということにつながるのだと思います。
だからおすすめされたこと、特に強調されていることは必ず実際の行動としてやってみること!
そうすれば、自分の知識や経験が身につく、ということ以外にも、信頼が増す、つながりが強くなる、また情報をくれるようになる、という好循環を生むのだと思いました。